ドバイ、アラブ首長国連邦(2023年12月4日) — アジア開発銀行(ADB)は本日、第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)において、アジア・太平洋地域におけるネイチャー・ソリューションズ・ファイナンス・ハブを発足した。このハブは、主に資本市場やその他の民間資本に焦点を当て、自然に基づく解決策(NbS)を組み込んだ投資プログラムに最低でも20億ドルを調達することを目指している。
浅川雅嗣ADB総裁は、「自然は、森林と陸上の生態系や海洋などを通じて、二酸化炭素排出量の約55%を吸収する極めて重要な二酸化炭素吸収源となっている」とした上で、「気候変動との戦いでは、自然を守ることが不可欠である。アジア・太平洋地域では、自然の損失がGDPの3分の2にも影響を及ぼす可能性があり、とりわけ脆弱な状態にある。そのため、このハブは、同地域での自然の損失に対する技術的かつ資金的な解決策をもたらすために切望されているプラットフォームである」と述べた。
資金や技術的な専門知識を提供しこのハブを支援する意向を示し、発足に参加したパートナーには、石油輸出国機構国際開発基金(OPEC基金)、フランス開発庁(AFD)、サウジ開発基金(SFD)、アセアン・カタリティック・グリーンファイナンス・ファシリティ(ACGF)、国際自然保護連合(IUCN)、国際自然資本ファイナンス促進団体のネイチャーファイナンス、ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)、世界自然保護基金(WWF)、バードライフ・インターナショナル、コンサベーション・インターナショナルなどが含まれる。
自然に基づく解決策は、伝統的なインフラと直接的な自然保護プロジェクトの双方において、プロジェクト設計に組み込まれている手法である。これにより、国やコミュニティの成長を促進しながら、自然の生態系を保護、管理、回復させ、生物多様性と人間の双方にメリットをもたらすことが可能になる。例えば、マングローブの再生や湿地帯の再植林は、生物多様性の回復や自然生息地の保護、炭素吸収、気候変動への回復力の向上に寄与し、地域社会の食料安全保障とエコツーリズムの強化に貢献する。
ラザン・アル・ムバラクIUCN会長兼COP 28の国連気候変動ハイレベルチャンピオンは、「開発、農業、都市化によって、陸と水の生物多様性は大きな圧力にさらされてきた」とした上で、「地球の陸・海・沿岸地域のそれぞれ30%の面積を保全し、劣化した陸水域および海洋生態系の30%を回復することが世界的に求められており、そのためには、自然に基づく解決策を拡大するための緊急の協力が必要とされる」と述べた。
このハブは、川上では自然に基づく解決策に関する意識、政策、能力構築を、また、川下では、債権や銀行などから直接資金を得るための、プロジェクトにおける革新的な資金組成を支援する、統合された活動の提供を目的としている。具体的には、自然に基づく解決策に資するプロジェクトで収益リスクを軽減するために保証を利用すると、他の方法よりもより多くの資本をネイチャー・ボンドから調達できる可能性がある。
このハブでは、保証、成果連動型支払、ブレンデッド・ファイナンス(官民共同での資金供給)など、自然に基づく解決策に資するプロジェクトのリスクを軽減するための様々な資金調達手段を展開する。ハブはグローバルな開発パートナーからのリスク軽減資金として約10億ドルを調達することを目標としており、いくつかの機関との間で協議が進んでいる。
OPEC基金のアブドゥルハミド・アルハリファ事務局長は、「気候変動と自然は密接に結びついている。自然に基づく解決策への協調融資を拡大するだけでなく、アフリカ、南米、アジア・太平洋地域における革新的なアプローチに関する知識共有のためにも、政府と開発機関の強力な協力が必要である」とした上で、「OPEC基金は、気候行動計画に沿ったこのイニシアティブを支援できることを誇りに思う」と述べた。
OPEC国際開発基金は、OPEC加盟国から非加盟国への資金供給を専門とする世界的な付託を受けた唯一の開発機関である。1976年の設立以来、OPEC基金は世界125カ国以上で4,000以上のプロジェクトに240億ドル以上の自己資金を拠出し、その総額は約1,900億ドルに上る。
ADBは、アジア・太平洋地域の気候バンクとして、2019年から2030年までの間に、気候変動適応のための340億ドルを含む累計1,000億ドルをADBの独自財源から気候変動対策に提供するという目標を掲げている。2022年、ADBは気候変動緩和資金43億ドルと気候変動適応資金28億ドルを含む総額71億ドルの気候変動対策資金の拠出を承認した。さらに、ADBは民間セクターから5億4,800万ドルの気候変動対策資金を動員した。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。