フィリピン、マニラ(2023年12月13日) — アジア開発銀行(ADB)は、中国とインドの堅調な内需が予想を上回る成長をけん引したことを受け、アジア・太平洋地域の開発途上国の経済見通しを上方修正した。
ADBが本日発表した『アジア経済見通し2023年12月版』(Asian Development Outlook (ADO) December 2023)によると、同地域の今年の経済成長予測は、9月時点での見通しの4.7%を上回る4.9%とされた。来年の見通しは4.8%に据え置かれている。
中国の今年の経済見通しは、第3四半期の家計消費と公共投資が成長率の押し上げ要因となり、前回予想の4.9%から5.2%に上方修正された。インドの成長予測は、工業の二桁成長に牽引され7-9月期に予測を上回るペースで拡大したことが背景となり、6.3%から6.7%に引き上げられた。中国とインドの成長率の上方修正は、製造業の不振に起因する東南アジアの予測の引き下げを相殺した。
アルバート・パークADBチーフエコノミストは、「アジア開発途上国は、厳しい国際情勢にも関わらず、堅調なペースで成長を続けている」とした上で、「域内のインフレも徐々に抑制されつつある。それでも、世界的な金利上昇やエルニーニョのような気象事象など、リスクは依然として残っている。アジア・太平洋地域の各国政府は、自国の経済がショックに強靭で、成長が持続可能であることを確実にするために、引き続き警戒する必要がある」と述べた。
『アジア経済見通し2023年12月版』によると、域内の今年のインフレ見通しは当初の3.6%から3.5%に引き下げられた。来年のインフレ率は3.6%で、前回予想の3.5%からわずかに引き上げられている。
製造業の輸出需要が低迷する中、東南アジアの今年の成長率予測は4.6%から4.3%に引き下げられた。中央アジア・コーカサス地域の見通しもわずかに下方修正された。太平洋諸国の見通しは変わらなかった。
これらの見通しに対するリスクとしては、米国をはじめとする先進国の金利が持続的に上昇していることが挙げられ、アジア・太平洋地域の脆弱国、なかでも債務の重圧が高まっている国では、金融不安につながる可能性がある。エルニーニョ現象やロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされる潜在的な供給混乱も、取分け食料とエネルギーに関してインフレを再燃させる可能性がある。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。